「彼女と別れた。」
そう言ったよね?
えっ?
いつ?
どうして私にそんなこと言うの?
私の頭の中はパニックだった。
私は黙っていた。
何を言えば良いのか分からなかった。
「元々うまくいってなかったんだ。彼女が就職して、色々なことが噛み合わなくなっていて。で、今日話し合って別れた。」
『そうですか。』
「他に好きな子が出来たのか?って、言われた時に気づいちゃってさ。俺、ルルちゃんのこと好きだって。初めて会った時から気になって目で追ってたんだよね。」
とシロさん。
「今、みんな彼女と呑んでる。姉御肌でみんなから慕われてる人だから。」
『そうですか。』
と私。
「どうしても会いたくなってさ。気持ちも伝えたかった。好きだ。」
と彼。
それからは沈黙・・・
ずっと沈黙・・・
私には免疫がない。
男の人と二人っきりで部屋で会うことも、こんな風に告白されたこともない。
だから、本当にどうしたら良いのか分からなかった。
ふと、視線を投げ掛けたゴミ箱にピンクの歯ブラシが捨ててあった。
それを見て、私は
『もう帰ります。』
とシロさんに伝えた。
ピンクの歯ブラシが私に出ていけと言っているようだった。
彼女の歯ブラシに私は負けた。
写真の彼女の顔がグルグルと頭の中で回っていた。