Bluebird~恋と愛のちがいについて~

自分の恋愛やセックスを振り返って整理していこうと思います♡

二十二歳 志賀さん(26)

待ち合わせ場所のロビーに早めに降りた。

朱莉さんはもう来ていた。


手をヒラヒラと振って知らせて来たのが可愛かった。





A「こんにちは。昨日は大丈夫だった?」





R「こんにちは。大丈夫でした。」





S「大丈夫ちゃうわ。」





A「あら?吐いてしまったん?」





R「それは大丈夫でした。でも部屋まで抱っこしてもらったんです。」






A「なんや。そんなことか。えぇねん、抱っこさせときぃ。」





S「さすがに重かったで。」





A「ルルちゃんで重いなんて言うてるようやったら、ポンコツやな。」





私を見ながら笑う。

志賀さんが少し拗ねたような顔をしていた。何だか可愛かった。




何を食べるか?という話になった。

私は和食が食べたかった。

それも普通の家ご飯のような和食だ。


志賀さんは何でもいい、と言って合わせてくれた。


朱莉さんが連れて行ってくれたのは、裏通りにある和定食のお店だった。





A「汚い店やけど、美味しいねんで。」





S「こんな店も知ってるんやな。」






志賀さんはちょっと驚いたようだった。

朱莉さんのイメージとはかけ離れた雰囲気の店だった。

壁は砂壁で毛筆で書かれたメニューは油汚れからかボロボロだった。


私は鯖の味噌煮定食にした。

志賀さんは生姜焼き、朱莉さんは親子丼だった。


丁度良い薄味でとても美味しかった。

付け合わせの白和えも、お味噌汁も美味しくて私はペロリと平らげた。





A「結構食べるねんな。」





と私を見て笑っていた。

定食は600円、親子間は500円だった。

朱莉さんが支払ってくれた。

私達が食べ終わる頃には満席で外に出るとサラリーマンのおじ様方が並んでいた。

人気があるのも頷ける店だった。





A「コーヒー飲みにいこっ。」





朱莉さんが言うと




S「あかんで。ルルはコーヒーアレルギーやねん。」




その嘘を私自身が忘れていた。





R「ごめんなさい。それ、嘘です。」





志賀さんが振り返って私を見た。





R「いや、最初の頃・・・私、志賀さんが苦手で・・・珈琲の店なんやから珈琲飲まなあかんっみたいなことを言われて、カチンと来て嘘ついたんです。すっかり忘れてましたけど・・・」





S「マジか・・・そんなに俺って嫌われてたんや。」





その言い方が可笑しくて、私は笑ってしまった。





R「珈琲で大丈夫です。」






私達は小さな喫茶店に入った。

何種類ものコーヒー豆が並ぶお店は珈琲の良い香りが漂っていた。


私はアメリカンを頼んだ。

少し酸味を感じる珈琲はとても美味しかった。

朱莉さんと志賀さんは本当に仲が良かった。

大学時代はよく一緒に遊んだし、バイトでもお世話になったと彼が話してくれた。



朱莉さんの所作に見とれてしまう。

まだ30歳だという朱莉さんは本当にエレガントだった。

フレンチレストラン以外にも会員制の同伴喫茶、クラブ、ドレス専門のセレクトショップ等を経営しているという。




A「今日、パーティーやで。来る?」





S「いや、行かへん。」





A「何で?来たらえぇやん。なぁ、ルルちゃん。」





S「ルルはそういうタイプちゃう。」





A「えっ?そう?そういうタイプでしょ?」


 



S「ほんま、勘弁して。絶対ちゃうから。」





何の話か全く分からなかった。




R「何の話?」





S「何でもない。」






A「仮面舞踏会の話。」





二人の声が重なる。




R「仮面舞踏会?」




志賀さんが溜め息をついた。




A「仮面を着けてショーを楽しむねん。」




R「ショー?」





A「そう。ストリップショーとかね。セクシーなパーティーよ。今日はスワッピングには参加しなくていいから安心して。」





R「スワッピング?」




私は志賀さんを見た。

志賀さんが大きな溜め息をつく。




S「スワッピングはパートナー交換や。グループセックスと言うか。その場にいてる人とセックスすんねん。要らんこと教えんといてや。」





昼間の喫茶店でする話ではないことに気づいて赤くなる。

朱莉さんが私に聞いて来る。





A「ルルちゃんってノーマル?」





R「ノーマル?」





私はすっとぼけた。

これは何のことを言っているのかすぐに分かった。





S「だから、ルルは普通の子やって言うてるやろ。」






A「女の子のことを好きになってしたことない?」






R「ないですよ。」





A「好きになられたことは?」





R「それもないです。」





A「ふーん。そうなんや。まだ蕾ちゃんってことか・・・」




見透かされているような気がした。

赤くなって俯いてしまう。

朱莉さんはレズビアンかバイセクシャルなのだろう。




S「朱莉、ルルには絶対手出すなよ。」




A「え~っ。数年ぶりのドンピシャやったのにぃ。」





S「ほんま、えぇ加減にしてくれ。」




A「私、バイやから。宜しくね。ルルちゃんも仲間かと思ったけど、勘が外れたみたいやね。でも、パーティーは圭ちゃんとおいで。今日のドレスは私がプレゼントするから、うちのショップで見てきてね。夜は創作イタリアンのビュッフェやから。17時スタートよ。遅れんといてね。」





そう言うと、朱莉さんはオーダー表を掴んで席を立った。





私は隣に座った志賀さんの顔を見た。



S「イヤやったら、はっきり断ってえぇねんで。」




私の手に彼の手が重なる。




R「イヤじゃない。見てみたい。」





好奇心だった。

知らない世界を覗いてみたい気持ちに突き動かされていた。





S「本気で言うてんの?」





R「うん。」






S「子供が行くとこちゃうで。」





R「志賀さんも大学生の時に見てたんやろ?」





S「俺はバイトや。」





R「バイトでも見てたんやろ?」





S「・・・」





R「大学生と社会人やったら、社会人の方が大人ちゃう?」





S「・・・大人や。」





R「じゃあ、連れて行って。」





S「絶対に俺から離れんといてや。それだけは約束して。」




 

彼は諦めたように私を見た。




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