二十歳 ジャスミンとタクオ(61)
案の定、母親にはこってりと絞られた。
気持ちが落ちるようなヒステリーだったが、無視されるよりはマシだと自分に言い聞かせて乗りきった。
「タクオは無事に帰れただろうか。」
そのことが気になった。
子供ではないし、旅慣れているから大丈夫だと理解していても気になる。
タクオの電話番号は覚えている。
連絡を取ることは可能だった。
でも。
そんなことをしていたら、いつかは彼女に知れることになるだろう。
彼の立場が悪くなることだけはしたくなかった。
宅配便の段ボールを部屋に運び、クローゼットに洋服を仕舞っていく。
ベランダに干してくれていた布団にカバーをかけてベッドを整えた。
部屋に電話を引く準備をしようと考えていた。
これから、ジャスミンとタクオがいない生活が始まる。