二十歳 ジャスミンとタクオ(58)
濡れた私のお腹と内腿等をティッシュで拭き取ると腕枕をしてくれた。
タクオの身体に自分の身体を寄せて胸に顔を埋めた。
泣きたくないのに、涙が止まらなくなる。
タクオを困らせたくはなかった。
「愛してる。」
タクオは私の髪にキスをしながら、何度も言ってくれた。
顔を上げて唇を重ねると指で涙を拭ってくれる。
「泣かないで。」
そう言われても、自分ではどうしようもなかった。
タクオは起き上がって壁にもたれ掛かると
「おいで」
と両手を広げる。
私は抱っこされる形でタクオの前に座った。
引き寄せられ、強く抱き締められる。
「また会えるよ。」
私の背中を撫でながらタクオは何度も繰り返した。
「タクオ、愛してる。」
私はタクオに伝えた。
自分のありったけの気持ちを伝えたかった。
「忘れないで。」
そうも言った。
覚えていて欲しかった。
タクオも泣いていた。
私達は抱き合って眠った。
目が覚めたら、キスをしてまた目を閉じた。何度もそんなキスを繰り返して朝を迎えた。
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「駅まで送る」
タクオは言い張ったけれど、部屋で別れた。
最後にキスをした。
繋いだ手をなかなか離してくれなかった。
いつもはクールなタクオらしくなかったけれど、嬉しかった。
「またね。」
そう行って部屋を出た。
泣きすぎてパンパンに腫れた目が痛い。
それでもまだ涙が溢れそうになって、笑ってしまう。
ジャスミンの部屋に寄る。
私の腫れた目を見て、大爆笑して抱き締めてくれた。
駅まで送る、と彼女も言ってくれた。
でも、断った。きっと駅で大泣きしてしまう。
玄関でキスをして別れた。
「家に着いたら連絡するね。」
そう言って手を振って駅に向かった。
切符を買って改札を抜ける。
次の電車まで10分程の時間があった。
いつもなら特急に乗る。
でも、今日は二時間かけて鈍行で新宿に出ることに決めていた。
ゆっくりとこの場所から離れたかった。
ベンチに座って空を見上げる。
春の匂いがしそうな青空だった。
視線を感じて改札口を見るとタクオがいた。
「あれ?私、何か忘れてた?」
そういうとタクオは鼻で笑う。
いつものタクオだった。
「やっぱり送って行きたいと思って。」
そう言って笑った。