Bluebird~恋と愛のちがいについて~

自分の恋愛やセックスを振り返って整理していこうと思います♡

二十歳 ジャスミンとタクオ(45)

バイトが終わって、タクオから電話が来た。

私が掛けた電話の後で、馴染みの旅館に電話を入れて宿泊できないか聞いてくれたらしい。

子供の頃から家族旅行で訪れている箱根の旅館で


「すごく素敵な所だよ。ちょうど離れが空いてたから、そこを予約した。楽しみにしてて。あと、車で行こう。その方が色々行けて楽しめると思うから。」


楽しそうに話していた。


何て言うか・・・

二十歳で箱根に馴染みの旅館があるってどういうこと?って思っていた。


箱根は2度目だ。

高校の修学旅行で箱根に行った。

行ったことは覚えているが、どこに泊まって何をしたかは覚えていなかった。

私の記憶は所々抜け落ちている。中学と高校の鮮明な記憶は、S君を好きになったことしかない。


自分でも変だと思う。

でも、本当に具体的な思い出や誰と仲良かったか?等の記憶はほぼない。

友達に言われて上書きした記憶くらいしか残っていない。



8時に部屋を出る。

赤いアコードワゴンが止まっていて、タクオが手を振っていた。

お姉さんから譲って貰ったらしいが、普段は全然乗ってない。

私も初めて見た。


内側からドアを開けてくれる。


「おはよう。眠れた?」


とタクオ。


「おはよう。眠れたよ。」


と私。




「良かった。」



そう言いながら荷物を後部座席においてくれた。

ウキウキしていた。


私達はまず芦ノ湖を目指した。

海賊船に乗って湖を周遊する。

手を繋いで、普通のカップルのように過ごせることが嬉しかった。

時間を気にせずにゆっくりと過ごせることも幸せだった。


箱根ハイランドホテルでランチを食べた。

タクオは予約してくれていた。


フレンチだったから


「ワインが飲みたくなっちゃうね」


って話ながら食べたけれど、タクオは車だし、私はこんな場所でワインを飲んだらいくらするんだろう?と思うと怖くて飲めなかったw


「彫刻の森美術館」と「箱根美術館」に立ち寄った後、旅館に向かう。


タクオは色んなことに詳しかった。

普段は分からないタクオを知ったような気分だった。


旅館はとても古い建物で、パッと見ただけで「高そう」だと分かる。

タクオは家族旅行でこんなにすごい旅館に毎年泊まっていたんだ・・・そう思うとドキドキした。


「環翠楼」は有形登録文化財に指定されている旅館だった。

何もかもが古かったけれど、手入れの行き届いた部屋は清々しくて落ちついた。

窓辺に座り、渓流の流れを見ていると時間が止まっているような気持ちになる。


タクオの手のひらが私の手の甲に重なる。

私はタクオにキスをした。

チュッチュッと軽いキスを繰り返す。

鼻先をつけて見つめ合う。


「気に入った?」


タクオが聞くから、頷いた。


「明日、銀行に寄って。多分、私の手持ちじゃ足りない。」


そう言うと笑いながら


「俺からの卒業プレゼントだから、そこは気にしないで。俺も久々に来れて嬉しいし。」


とタクオ。


そうは言われたが、気にするわ。

この離れって通常のお部屋より、きっと高い。いや、この旅館自体がかなりお高いよね。

そんなことばかり考えてしまう私はやはり関西人寄りの人格なのだろう。


だが、私はタクオに甘えることにした。

お礼なら、どんな形でも出来ると考えた。


離れには内湯があった。

檜風呂だった。

素敵だなぁと思っていると、タクオに温泉に行こうと誘われた。

渓流が見える露天風呂を一時間貸し切りにしてくれていると言う。

私は急いで準備した。

広いお風呂で、私達はくっついて移動した。

タクオは眼鏡がないとすべての物がボヤけて輪郭を失う程、目が悪い。

二人でワニのように頭だけ出して、渓流を眺めた。タクオはほぼ見えてなかったらしいけれど。まだ冷たい空気と少し熱めの温泉が気持ちよかった。

タクオは「のぼせそうだ」と何回も言っていたけれど。

楽しかった。

あっという間の一時間だった。


夕食は部屋で食べ、その後は本館の中を見て回った。部屋に戻ると、布団が敷かれていた。


新婚気分だ。



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