19歳 シロ⑧
キスくらいすれば良かった。
明け方に目が覚めて、そう思った。
別に襲ったって良かった。
私がしたいと言えば、彼はしてくれただろう。そう思った。
シロさんが引っ越す日に私は実家に帰った。
そして、新学期が始まる前日まで部屋には戻らなかった。
シロさんのいない生活が始まった。
もう見かけることもない・・・
そう思うと胸にポッカリと穴が空いているようだった。
ジャスミンは相変わらず元気だった。
2年になってから、私はまた和巳君からアプローチを受けた。
「友達でいいでしょ。」
笑って受け流すと
「友達でいいと思っていたら言わないよ。」
と返された。
でも、やっぱりそんな気持ちにはなれなかった。
就職についても考えなければならなかったし、私はシロさんを忘れられていない。
あの日以来、もう泣くようなことはなかった。
でも、彼に会いたい気持ちは消えなかった。
自分でも未練がましく、しつこいと思う。
でも、どうしようもなかった。
もうすぐ私は二十歳になる。