Bluebird~恋と愛のちがいについて~

自分の恋愛やセックスを振り返って整理していこうと思います♡

19歳 シロ⑦

卒業式の夜。


私は部屋で一人で過ごした。
みんな居酒屋に集まると言っていたけれど、私が行けば要らぬ気を遣わせてしまう気がして遠慮した。


明日、シロさんが引っ越すとジャスミンが教えてくれた。
引っ越し先はあの人と一緒に暮らす部屋だと言う。


何をしていても、涙が出た。


止まったと思うと、不意にポタポタと涙が落ちる。



でも、どうしようもない。



シロさんと別れてから何人かから告白されたり、誘われたけれど、全て断った。
そんな気持ちになれなかった。



時計の針を見つめて、時間が過ぎた。

10時には寝てしまおうと思い、マグカップを洗っていた。


ドアがノックされた気がした。


水を止めてドアを見る。


こんな時間に部屋に来る人なんていない。



「はい。」


小さな声で返事をすると


「あっ、俺。」


と声がした。



急いでドアを開ける。


シロさんだった。



「ちょっといい?」



と言われて、部屋に招き入れた。


温かい紅茶を入れたマグカップを手渡す。

シロさんの手は冷たかった。




「明日引っ越すから。最後に会いたいと思って。」


そう言った。


「ルル、彼氏できた?」


私が首を振ると


「そっか。」


と言う。




「ごめん。俺が悪い。傷つけて、ごめんなさい。」





そう言われて、涙が溢れた。

ポタポタと膝に涙が落ちる。

泣くのはイヤだった。

でも、止まらなかった。




謝るくらいなら、フラなきゃいいじゃん。

心の中で毒づいた。





シロさんは黙っていた。
冷たい手が頬に触れて、涙を拭ってくれた。





「幸せになって欲しいと思ってる。」





また勝手なことを言う。
バカじゃないかと思った。




でも。
やっぱり私はこの人が好きだ。
声も手も好きだ。
顔も、男の人にしては白すぎる肌も。
優しい性格も、素直な所も。
飄々とした雰囲気もと少し猫背な所も。



「元気でね。」



それだけ言うのが精一杯だった。



「うん。ルルもね。」



シロさんが立ち上がった。
ドアへと向かう。



「じゃあね。」




ドアノブを掴んで彼が言った瞬間に私は引き留めた。


「ちょっと待って‼」


去年の夏にバイトして買った彼へのバースデイプレゼントがある。


欲しがっていたシルバーの指輪だ。
4万円近くした指輪を渡せないまま、持っていた。


今渡さなければ、もう渡せる機会はないだろう。



「誕生日プレゼントが卒業祝いになっちゃったけど。」



差し出すと、シロさんは


「貰えない。」


と言った。



「貰って。シロさんのサイズだし。あなたの為に買ったものだから。持っていて欲しい。」


思っていることを泣かずにちゃんと言えたことに安堵した。


無理矢理、彼の指にショッパーを引っ掛けた。


「ごめん。」


そう言った彼の声は震えていた。


今日初めて彼の顔を正面から見た。


彼は泣いていた。


涙が頬を伝って顎先から落ちる。


私は男の人がこんな風に泣くのを初めて見た。


妙に冷静に
「シロさんって泣き顔も綺麗だ。」
そんな風に思っていた。


手の甲で涙を拭いながら、嗚咽を漏らして泣く彼の顔を覗き込む。


「さよなら。元気でね。」


私が言うと、彼は頷いた。





×

非ログインユーザーとして返信する