19歳 シロ⑤
何がツラかったって。
学校内で、シロさんとあの人に会うことが一番堪えた。
シロさんに気づくと、ジャスミンが一生懸命私に話し掛けてくれた。
シロさんと別れたことで、私には何人か友達が出来た。
どうやら、シロさんと付き合ってた私は同級生の女子から反感を買っていたらしい。
別れたことでジャスミンを通して、一緒に遊ぶ友達が出来たのだ。
皮肉である。
私は1度も泣かなかった。
涙は不思議な程出なかった。
でも、夜一人になるとシロさんのことばかり考えていた。
彼ともう一度したかった。
思い出して、自分で自分を慰めた。
彼の手や唇を思い出し、自分の身体に触れた。
クリトリスを刺激してイク時は、いつも表情を変えずに私を突くシロさんの顔を思い出した。
甘美な心地良さに包まれながら眠ることで、私は自分のバランスを取っていた。
卒業式が近づいた頃、私は引っ越しを決意した。
バス&トイレ付きの新築コーポに申し込み、引っ越し先を決めた。
荷物はさほど無かったから、ジャスミンに手伝って貰う約束をしていた。
当日来たのは、ジャスミン以外にチビさんとシロさんだった。
車を出して運んでくれると言う。
私はその申し出に甘えることにした。
あれ以来、シロさんとは一言も口を聞いて居なかった。
そのまま彼が卒業してしまうのは、やはり嫌だった。
彼はいつも通り飄々と優しく私に話し掛けて来る。
「痩せた?」
そう聞かれた時は猛烈に腹が立ったけれど、
「そんなことない。」
と答えた。
実際には私はかなり痩せていた。
別れてから、一人で居る時は食事を抜くことが多かった。
最初は食事が喉を通らなかったから食べれなかったが、3ヶ月が過ぎた頃から食欲は戻っている。
食べないのは単に面倒臭かっただけだった。
引っ越しが終わり、部屋が綺麗に片付くと3人は帰って行った。
シロさんはグレーのパーカーを忘れて行った。彼のトワレの匂いがする。
着すぎてくったりと柔らかくなった生地は、触ると気持ち良かった。
パーカーに涙が落ちた。
みるみるうちに染み込んで
私は初めて声を出して泣いた。
泣いても泣いても、涙が溢れた。
もう一度、抱きしめて欲しかった。
彼が恋しかった。
彼のパーカーを抱きしめて眠りに落ちた。