19歳 シロ②
シロさんは不思議な人だった。
すごく目立つけれど、前に出ようとはしない。
飄々としていて、優しい。
いつも穏やかでニコニコしているような人だった。
セントジェームスのボーダーシャツやLevi's501、コンバースのジャクパーセル等の今では定番になった洋服をおしゃれに着こなしていた。
当然モテる。
でも、なぜか私はあまり気にならなかった。
サークルの先輩や後輩としか話さないような所があったからかもしれない。
付き合い始めの頃、私は先輩女子に総スカンを食らっていたけれど、ジャスミンやチビさん、篠さんのおかげで夏休み前には周りも受け入れて仲良くしてくれた。
何の心配もしていなかった。
夏休みに入ると私は強制的に実家に帰らされた。家業の手伝いと運転免許取得の為だ。
「電話するね。」
そう言って、駅で別れた。
シロさんは笑って手を振っていた。
夏休みは2カ月あった。
最初の1ヶ月は電話もしたし、手紙も来ていた。
2ヶ月目に入ると電話をしても出ない日が増えた。
「バイトのメンバーが足りなくて、空いてる日は入るように言われている。」
そう言っていた。
「帰ってきたら、どこか行こうね。」
その言葉を信じていた。