Bluebird~恋と愛のちがいについて~

自分の恋愛やセックスを振り返って整理していこうと思います♡

二十一歳 志賀さん(14)

私達は付き合い始めた。


付き合い始めたけれど、それまでと変わらなかい付き合い方だった。

変わったことと言えば、志賀さんの部屋で過ごすことが増えたくらいだ。



志賀さんはまたオッドアイの白い猫を飼い始めた。

ミー子が通っていた動物病院の先生から保護した捨て猫の中にオッドアイの子猫がいると連絡を受けて引き取ったのだ。



私は犬派だ。

猫も好きだったけれど、ひどい猫アレルギーだった。

猫に触ると目が腫れて肌に湿疹が出てしまう。

でも、嬉しそうにしている志賀さんには言えなかった。





志賀さんはその子を


「雪」


と名付けた。

相変わらず捻りがなくてそのまんまである。


不思議なことに雪に触ってもアレルギーは出なかった。

病院で綺麗にしてもらって、全く外に出さない部屋飼いだったからかもしれない。


クルクルと喉を鳴らしてすり寄ってくるのがとても可愛くて、お留守番させるのが可哀想だと思っていた。


だから出来るだけ部屋で過ごした。


雪は志賀さんよりも私になついていた。

私に付いて回り、座ると膝の上で丸くなる。

セックスの最中には、私に寄り添って彼を威嚇し続ける。

私が喘ぐとシャーシャー言っている雪が可愛くて引き寄せてキスをする。

堪らず志賀さんが隣の部屋のケージに入れると、私を呼んで鳴き続けた。

志賀さんは





「集中出来ない。」





と苦笑いだった。

事が終わると一番に雪を迎えに行った。

雪を溺愛する私を志賀さんはいつも嬉しそうに見ていた。




「一年付き合ったら、結婚を考えて欲しい。」




彼に言われていた。




私は銀行での仕事に飽き始めていた。

飽きてはいたけれど、コネで入った身としては簡単に「辞めたい。」とは言えない。

まだ入行して一年だ。

結婚は綺麗に辞める一つの手段かもしれなかった。




志賀さんは私に優しかった。

職場の人達には内緒にして貰っていた。

彼の人気を考えると、仕事をする上で差し障りが出ることは予測出来た。

前の支店で経験済みだっただけに、それは避けたかった。

私の勝手なお願いを彼は黙って受け入れてくれた。




5月の私の誕生祝いとして食事に行った時に、彼の行きつけの小料理屋で偶然お母様に会った。

綺麗な方だった。

きちんと巻かれた茶色の髪は艶々で、白いネップツィードのスーツを着ていた。

真っ赤な口紅に真っ赤なネイル。

スカート丈は膝上10cm程で、細い脚に似合っていた。





正直、うちの母親との違いに驚いた。




きちんとご挨拶したつもりだったけれど、突然のことにとても緊張していた。





志賀さんに向かって



「今度はうまく行くとえぇねぇ。」



と笑って言うと他の方達と出て行かれた。



志賀さんの機嫌があからさまに悪くなっているのが分かる。

そう言えば、家族について話したことがなかった。


今じゃなくてもいい。

そう思って、他の話に切り替えた。



お刺身と冷酒がとても美味しいそのお店は私のお気に入りになった。

また行きたい・・・そう言うと



「また行こう。」




と言ってくれた。






その日、私は初めて志賀さんの部屋に泊まった。



母親には



「マリさんとみんなが誕生会をしてくれるから、マリさんの部屋に泊まる。」



と嘘をついた。



マリさんには全部話していた。

私が志賀さんと付き合うことを決めた時はすごく驚いていたけれど、色々と協力してくれる。

ありがたかった。



部屋に戻ると私の生まれ年の赤ワインを開けてくれた。

お父様のワインセラーからこっそり盗んで来たと聞いて慌てる私に




「ルルは赤ワイン苦手やって言うけど、高いのは飲みやすいで。」




と笑う。


渋みが無く、本当に飲みやすくて美味しかった。

チーズと干し葡萄を摘まみながら、二人で一本を空けてしまった。


志賀さんはベランダに出て煙草を吸っていた。

私は雪と猫じゃらしで遊ぶ。

居心地が良い時間だった。






ソファーに座った志賀さんに



「お母様って綺麗だね。」



と言うと



「そう?若作りや。」



と棘が含まれた返事が帰って来た。



私と目が合うと



「後妻やから。俺の母親ちゃう。親父の嫁や。」



と言う。

私は彼の顔を見つめて黙ってしまう。



「俺の母親は離婚して別の家庭を持ってるわ。」



インフルエンザで寝込んでも家族に連絡をしないことに合点がいった。



「俺が中3の時に親父が離婚してん。それであの人が来た。俺も弟もあの人を母親やなんて思ってない。」



吐き捨てるように言った後で



「聞きたいことは聞いてくれてえぇねんで。」



と笑う。



「もういいよ。」



そう言うと私を後ろから抱き締めて来た。




「俺はルルがいてくれたらえぇねん。」




肩越しに言った志賀さんの声は淋しそうだった。



この人のどこか淋しげな雰囲気は家庭環境のせいだろう。

中出ししてまで私を本気で欲しがるのも、自分の家庭を持ってその淋しさを埋めたい一心だったのかも知れない。



雪が私の膝から降りたのを見計らって、彼は私にお風呂に入ろうと言って来た。

手を引っ張られて立ち上がった。




×

非ログインユーザーとして返信する