Bluebird~恋と愛のちがいについて~

自分の恋愛やセックスを振り返って整理していこうと思います♡

二十一歳 志賀さん(6)

私はタクオの電話に出なかった。

膝を抱えて呼び出し音を聞いていた。



今日のセックスは宿題の為じゃなかった。

私は普通に濡れた。

タクオに話すことが憚られた。

志賀さんのことが好きな訳じゃない。

でもなぜか後ろめたかった。





あれ以来、志賀さんは私の前で大きな声で話さなくなった。

言葉数も減った。

けれど、明らかにすごく優しくなった。



本当の志賀さんはこういう人なのかも知れない・・・



そう思い始めた頃に痺れを切らした同期に合コンのセッティングの催促を受けた。


私は仕方なく志賀さんにその事を話した。


「いいよ。ルルの頼みなら。」


彼が受け入れてくれて、私はホッとした。


「でも・・・俺が好きなのはルルやで。それ、忘れんといてや。」


彼は運転しながら、私を見ないでそう言った。



2月の初めに合コンすることを約束した。




合コンのメンバーは志賀さん狙いの同期3人と私だった。

正直行きたくなくて


「3人で行ってくれ。」


とお願いしたが、聞き入れては貰えなかった。


志賀さんも友達を3人誘ってくれていた。

個室がある居酒屋で8人合コンが始まった。


志賀さんの高校の同級生だと言う男性陣はレベルが高かった。変な見た目の人がいなかった。

話を聞いていたら、みんな自営業の息子だと言う。

ボンボンだった。


志賀さんは声が大きいバージョンで場を盛り上げていた。



彼狙いの3人は志賀さんだけではなく、他の男性にも愛想を振り撒いていた。



現金なものだ。



私はあまり話さなかった。

ぶっちゃけ話すことがなかった。

話を聞いているふりをしながら、黙々と食べて黙々と呑んでいた。



隣に座ったNさんの話に相槌を打つ。

そんな程度の打ち解け方だった。

でも、既に周りの空気に疲れていた。



お酒が進むとNさんが王様ゲームをやろうと言い始めた。

面倒臭い・・・と心の中で毒づいた。

みんな酔っているせいか、ノリノリで盛り上がっている。

女性陣はカシスオレンジやカルアミルクを数杯飲んだだけで顔を真っ赤にしている。

「お酒に強くない。」

そう言っていたけれど、甘いジュースのようなカクテルで酔っぱらっている彼女達が女の子らしくてちょっと萌えた。


段々とエスカレートしてきてバストにタッチとか指を舐めるとか、エッチな命令が増えて来ていた。



そんな中で、Nさんと私がフライドポテトキスを命じられる事態になった。

心底イヤだった。

キスはゲームですることじゃない。



N君が唇を尖らせて、ポテトを咥えて待っている。

マジで気持ち悪い。

でも空気が悪くなるようなことは避けたかった。

仕方なく端っこを咥える。

N君の唇が近づいてくる。

私が目を閉じた瞬間


ガチャン


と大きな音がした。


ジョッキが倒れてビールが広がっていく。

みんなが慌ておしぼりで抑えた。



志賀さんだった。

目が合うと唇の端で笑っていた。

助かった。


N君は仕切り直しをすると言って食い下がったが


「ゲームのチャンスは一回きりや。」


と周りから諭されていた。



結局、それを合図にポケベルの番号交換をして、終了した。


お代は男性陣が払ってご馳走してくれた。


お礼を言って店を出た。


みんなは二次会に流れるようだったが、私は門限があるから・・・と別れた。








タクシーを捕まえる為に大通りに向かって歩く。明るいけれど、歩いている人は居なかった。

誰かが後ろからついて来ている気がして、小走りになった。

冷や汗が背骨に沿って落ちていく。

大通りに出てタクシーを見つけ、手を挙げようとした瞬間に後ろから腕を掴まれた。


「ルル?」


志賀さんだった。


汗が額から頬を伝う。

心臓が早鐘のように鳴っている。

息がしにくくなって、私は震えながらうずくまってしまった。


「大丈夫か?ごめん、びっくりさせて。」


頭の上から志賀さんの声がして、背中を撫でてくれた。

ゆっくりと深呼吸して呼吸を整えようとした。


「大丈夫。びっくりしただけ。」


そう言いながら、顔を上げる。

手を取って貰って立ち上がろうとしたが、

脚が震えて立ち上がれなかった。



横抱きで持ち上げられる。



「知り合いのbarがあるから。」


とそこに連れて行ってくれた。

ソファーに座って水を飲んだ。





しばらくして、落ち着いた所で帰ることを告げると、志賀さんはタクシーで送ってくれた。


門限が過ぎていた私に、一緒に謝ってくれると言ってくれたが、丁重にお断りした。

余計に話がややこしくなるのは目に見えていた。




今日は門限破りのお説教だけでいい。




志賀さんはそれ以上、何も聞かなかったし、話さなかった。

ただ、手を握っていてくれた。

私にとても優しかった。



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