Bluebird~恋と愛のちがいについて~

自分の恋愛やセックスを振り返って整理していこうと思います♡

二十一歳 トキ(1)

本店に移動になって1ヶ月が過ぎた。

小さな支店とは違って、本店は人間関係がドライだった。

私にはそれが有り難く、それなりに快適だった。


私の担当は窓口業務だ。


窓口には切れ間なくお客様がやってくる。

カルトンを出して通帳を受けとる作業を淡々とこなさなければならない。


「おいっ‼」


突然、そう言われて顔を上げるとトキだった。


「お前、銀行員になったの?」


と話し掛けてくる。


「うん。元気?」


と返すと屈託なく笑った。


丁度、お昼休憩に入る時間だったからランチに誘った。





トキは高校の同級生で、3年間クラスが同じだった。

東京から親の都合で引っ越して来て、こっちの高校に入学した。

丸坊主の新入生に一人だけ長髪で標準語、

黒淵の眼鏡を掛けていて、お洒落だった。

185cmの身長とサッカーの上手さで、たちまち女子の人気者になった。


ただ、女グセの悪さは天下一品で、1週間単位で相手を変えていた時もあったし、高2の終わりから高3にかけては下級生と実家で半同棲だった。


3年間クラスメートだったので、まぁまぁ仲良しだったと思う。

でも、色気のある話は皆無だ。





喫茶店でナポリタンを食べた。

トキはまだ大学生だった。

大阪の大学に通っていたけれど、ちょくちょく帰省しているらしい。


「ルルがさ、めちゃくちゃ綺麗だってS君が言ってたよ。だから、俺も会いたかったんだよね。」


とプレイボーイのようなことを言う。


大阪にいる同級生の話をしたりして、時間はあっという間に過ぎた。


「ねぇ、何時に終わるの?」


と聞かれて


「何にも無ければ、5時半くらいかな。」


と答えた。







仕事が終わり、着替えて外に出るとトキが待っていた。

何となくいるだろうな、と思っていた。

女に対してはマメだと知っていた。



ドライブに行かないか?と誘われた。

トキの車があるのかと思ったら、私の車だった。

笑ってしまう。

隣にトキを乗せて海へと向かった。


夏が終わって閉鎖している有料海水浴場に着く。

ロープを潜って中に入ると誰もいない砂浜が広がる。

歩いていると手を繋いで来た。


「ルルってさ、彼氏いるの?」


と聞かれて、いない、と答える。


「好きな人は?」


「それはいる。」


速攻で答えた。


「俺じゃダメ?」


そう言われて、さすがにトキの顔をマジマジと見てしまった。


「相変わらずだねぇ。」


つい言ってしまうと、照れたように笑っていた。

誉めてねーよっ、と心の中で毒づく。



高校時代だけでも、軽く20人とは肉体関係があったはずだった。

後腐れなくセックスするなら、丁度いいのかもしれない。

そんなことを考えていた。



「俺と付き合ってよ。」


トキの顔が近づいて来て、キスをした。

軽く唇を重ねて離れていく。



「ホテル行く?」


今、初めてキスしたのにホテルに誘ってくるなんて。


「アホちゃう?」


笑いながら言ってしまった。





23時のタクオの電話には、まだ出れなかった。


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