Bluebird~恋と愛のちがいについて~

自分の恋愛やセックスを振り返って整理していこうと思います♡

二十一歳 南口(4)

私は東京行きの航空チケットを片道分購入した。

夕方のチケットが取れてホッした。


母親には


「体調不良の先輩の代わりに三泊四日で東京研修に出ることになった。」


と嘘をついた。


「そんな顔で行くの?」


と当然のことを言われたが、マスクしてれば分からない、と交わした。


電話の呼び出し音をOFFにして留守電をセットし、旅行鞄に必要なものを詰め込んで、バタバタと家を出た。



リムジンバスで空港に向かい、すんなりと飛行機に乗り込めた。

羽田に着くと吉祥寺に向かう。

吉祥寺にはジャスミンが住んでいた。



20時過ぎに駅に着いた。



八月のモアッと蒸し暑い空気が都会の匂いを鼻先に運んで来る。

ジャスミンには家を出る前に連絡を入れておいた。

羽田に着いて、再度連絡すると家に帰ってくれていた。

迎えに来てくれているはずだった。

キョロキョロとジャスミンを探して歩く。

出口を間違えたかと思って確認しようと、もと来た道を振り返る。






「ルルッ。」


名前を呼ばれた。

振り向いた視線の先にはタクオが立っていた。

考えるよりも先に抱き締められた。

周りの人が私達を見て通りすぎて行くのがわかる。

涙が溢れた。



「髪の毛、切ったんだね。」



ティアドロップのピアスが揺れる耳許でタクオの声がする。

私は小さく頷いた。



手を繋いで、ジャスミンのマンションに向かった。

私達は何も話さなかった。

マンションは探す必要なんてなかった。

すぐに分かった。

駅から2分。

一番高さのあるマンションに彼女は住んでいた。


オートロックのマンションなんて初めてだったけれど、タクオが部屋番を押すとジャスミンが入り口を開けてくれた。

エレベーターに乗ると繋いだ私の手の甲にタクオがキスをした。


「大丈夫だよ。」


そう言う。

その言葉でジャスミンが彼に話をしていることが分かる。


ジャスミンが部屋のドアを開けて待っていた。手を広げて私を抱き締めてくれる。

この感じ、懐かしい。

早口も相変わらずだった。

バタバタと部屋に招き入れてくれる。



「マスク取って見せて。」



心配そうに顔を覗き込まれ、俯く。

タクオには見られたくなかった。


彼女が手を伸ばしてマスクを外す。

私の顔を見て、そのまま何も言わずに私を抱き締めた。


「この髪型、すごく可愛い。」


全然関係ないことを言う。

ジャスミンの声は震えていた。


タクオが私の顔を凝視していた。


「あんま、見んといて。」


そう言うと、目を逸らしてくれた。



きっとジャスミンが思っていたよりも、私の顔は酷かったんだと思う。

知り合いの和食のお店を予約してくれていたが、キャンセルして部屋でピザでも頼もうと提案してくれた。



「ピザ、久しぶりだよ~。」


私が言うと


「何でも好きなの頼んでいいよ~」


と笑った。


「タクオ、いくら久しぶりだからってさ。ルルのこと見すぎだよ。」



ちゃかしたようにジャスミンが言うと、タクオが照れたように笑った。



美味しそうなピザが届いた。

けれど、口の中が痛くてほとんど食べれなかった。

氷が入った白ワインをストローで飲む。

口の中が冷やされる感じが心地良くて、痛みが気にならない。

酔い始めたことには気づいていた。



隣に座ったタクオが何度も大丈夫か?と聞いてくる。

大丈夫だと答えながら、呂律が回らなくなっていた。



急にジャスミンが


「私、明日仕事でプレゼンがあるからさ。兄貴の所で資料まとめるわ。」


と言い出した。


タクオに声を掛けて、二人で玄関に向かう。二人が話す途切れ途切れの声をぼんやりと聞いていた。

暫くして、タクオが戻って来た。

ソファーにもたれ掛かるように座った私の隣に座る。

手が伸びて来た時に私の身体が固くなる。


「大丈夫だよ。」


そう言うと髪を撫でてくれた。







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