二十歳 ジャスミンとタクオ(42)
私がジャスミンを失いたくない理由は彼女程、自分を必要としてくれる友達が今まで居なかったからかもしれない。
私の母は私のことを自分の所有物のように思っている人だ。
中学・高校時代、休みの日に友達と遊びたいと言っても許してはくれなかった。
「休みの日は家の手伝いをするものだ。」
と言って、外出は厳禁だった。
友達との悩みを口にしようものなら
「友達なんていらないわ。他人があんたに何をしてくれる?信用できるのは家族だけ。」
そんな風に言われ続けた。
また、友達の家庭を話題に上げて悪口を言うのも日常茶飯事。
それもイヤだった。
毎日50円のお小遣いだった私は、放課後に友達と寄り道も出来なかった。
お年玉は「お母さん銀行」に消えた。
通常であれば、私名義の通帳に貯金をしてくれていたりするのだろうが、そんなことは全くなかった。
まぁ、短大に進学することでお金が必要になったのでそれはチャラかもしれない。
ただ、私は奨学金を貰って生活費にあてていたし、足らずはアルバイトで補っていた。奨学金は勿論自分で返済。
そんなこんなで、他人と深く付き合ったことがそれまでの私にはなかったのだ。
入学した頃の私はびっくりされるくらい世間知らずで、騙されそうになったこともある。
そんな時、いつもジャスミンが助けてくれた。
ジャスミンがいなければ、まともな学生生活は送れていなかっただろう。
感謝していたし、これから先も友達でいたい人。私にとって大切で必要な人なのだ。
タクオにジャスミンが知っていたことを話すと
「よかったじゃん。もう嘘をつかなくて済む。」
そう言っていた。
私と同じようにホッとした顔をしていた。
彼は彼なりに考えていたんだろう。
タクオだってジャスミンのことは好きなはずだ。