短大入学 一目惚れ⑬
その夜はほとんど眠れなかった。
「ごめん。嫌だったら言って。」
そう言うとシロさんは私から離れた。
私が階段を上ると
「じゃあね。」
と手を振って帰っていった。
私は彼が見えなくなるまで見送ってから、部屋に入った。
普通なら、抱きしめ返すんだろう。
ドラマだとそうだよねって考えた。
でも、私にはそんな勇気も経験もありませんでした。
いっぱい、いっぱいだった。
何度も寝返りを打ちながら、シロさんのことを考えて朝を迎えた。
少し早めに準備して、学校に向かった。
お昼休みに先輩女子5人に呼び出された。
前のメンバーそのままだった。
「シロが彼女と別れたんだけど、原因はあんただって?何したの?」
「みんな彼女の味方だからね。シロと付き合うなんて許さない‼」
等々、口々に言ってくる。
私はピンクの歯ブラシを思い出していた。
『そうですか。』
としか言いようがなかった。
ただ、シロさんに会いたいと思うだけだった。
またもやジャスミンが心配して待っていてくれた。
『午後からサボろう✨』
そう言うと、他の友達に代返を頼んでくれた。
ジャスミンはほぼ全員の一年生と友達になっていた。
私の友達はジャスミン1人。
すごい差であるw
「さっき、シロさんに会ったよ。」
ジャスミンが言った。
「彼女と別れたってさ。ルルのことが好きだって。フフフッ✨いいんじゃないの?別れたなら、付き合えば。なんの問題もない。先輩達がどーのこーの言ったってさ。仕方ないじゃん。」
続けて言う。
「私はルルの味方だよ。」
ジャスミンは八重歯を見せて笑いながら、ピースした。
私はその笑顔にやっぱりジャスミンって可愛いな、そう思っていた。
駅前の京風ラーメンのお店に行こうと歩いて向かった。
その途中でシロさんと遭遇・・・
シロさんは親友のチビさんと一緒だった。
ジャスミンがお昼ご飯に誘うと、いきなりチビさんが
「今から、みんなでカレー作って食わねーか‼」
と、テンション高く言い放った。
チビさんは背が低い。
155cmくらいで、早口で声が大きい。
いつもシロさんと一緒にいて、アパートの部屋も隣だ。
私はと言うと。
昨日のことが頭を過り、恥ずかしくてまともにシロさんを見れなかった。
例のごとく俯いていた。
ジャスミンが
「いいですねーっ‼うちで作りましょ‼」
と元気に答えてくれた。
四人でスーパーで買い物して、ジャスミンの部屋に向かう。
私やシロさん達はアパートに住んでいたが、ジャスミンはマンションの住人だった。
1LDK、トイレとバスは別々の新築マンション✨
部屋にはソファーもあり、広かった。
カレーとサラダを作り、四人で食べた。
夕方まで一緒に過ごし、解散。
ジャスミンが「明日出掛けよう。」と言ってきた。
次の日は私の誕生日だった。
二人で買い物に行く約束をして私は部屋を後にした。
マンションのエレベーターを降りるとシロさんが待っていた。
「明日、誕生日でしょ?」
とシロさんが言った。
驚いた私に
「ジャスミンから聞いた。」
と言う。
『うん。明日ジャスミンと買い物に行くんです。』
と伝えると、今夜8時に会えないか?と聞かれた。
迎えに来てくれると言う。
「大丈夫です。」
と答えると、嬉しそうにシロさんは笑った。
「じゃあ、後で。」
そう言って別れた。