短大入学 一目惚れ⑩
夜、銭湯に行った。
私のアパートにはお風呂がなかった。
大家さんの家のお風呂に入れたけれど、大家さん家族が入った後に入ることに抵抗があり、銭湯やジャスミンの部屋のシャワーを借りていた。
部屋は男子禁制のアパートだった。
帰って来たら、アパートの前にシロさんが1人で立っていた。
「良かった。部屋の電気が消えてたから、ジャスミン家かと思ってた。」
と彼は言った。
私はお風呂上がりの部屋着で、それがとても恥ずかしくて俯いてしまった。
顔が見れなかった。
「ちょっといい?」
と言われたけれど、着替えたかったので少し待って貰えるかと聞いた。
「コンビニで待ってる。」
そう言って彼は道路を渡って行った。
ドキドキしていた。
心臓の音が聞こえるんじゃないか?
そう思うくらいドキドキしていた。
急いで着替えて、コンビニに向かって走った。
シロさんは雑誌を立ち読みしていた。
私を見つけると、すぐに外に出てきた。
「寒いね。ちょっと話したいから、俺の部屋に来ない?」
と言う。
私は頷いて、並んで歩いた。
シロさんは何にも話さなかった。
ただ、私の歩調に合わせて彼の部屋に向かう道を黙って歩くだけだった。
抜けるように白い肌と、柑橘系のトワレの匂い、ひんやりとした夜風。
私の鼓動だけが騒がしくて、少し泣きそうになってしまった。
黙って10分程歩いた。
彼の部屋は黒のパイプベッドと黒いテーブルが置かれたシンプルな部屋だった。
「上がって。」
そう言うと、お湯を沸かして温かい紅茶を入れてくれた。
マグカップを持ち、ベッドに腰掛けている彼が口を開いた。
「彼女と別れた。」
そう言った。
